次にクリッカの精度を考えます。これも大変簡単な計算です。
先ほどと同様に、的面までの距離を、矢が的中するまでの鉛直方向の降下距離を、とします。さらに、引尺を、矢の初速を、弓のバネ定数をとします。リムを単純なバネと思ってしまうわけです。すると、矢のポンド数となります(但し、もちろん、単位はポンドではなくSI単位系です)。
ここで、弓を引いたことによるエネルギーが全て矢の運動エネルギーに変わったと近似すると、という関係式が成り立ちます。この近似は、リリース後のリムやストリングの振動や押し手への反動を無視したことに対応します。
次に垂直降下距離は、矢の空気抵抗を無視して水平方向には等速運動をすると近似すれば、重力加速度を、矢の質量を、矢の滞空時間をとしてですから、が成り立ちます。これに最初の引尺の関係式を代入すると、が得られます。
さらに、ずれの微小量を調べるために両辺の微分を取ると、
という関係式が得られます。ここで、は矢にかかる重力、はポンド数ですから、両者の単位を揃えて、それぞれ、0.02kg(アルミ矢1616を実測してみました)、及び、引尺を50cm(矢尺−ストリングハイト)、ポンド数を15kg程度とすれば、
となりますから、前頁と同様に、またまた、
- ともかく50mで80cm的に的中すれば良いのであれば、mとすると、cm程度となって、かなり適当に引いても大丈夫、ということになります。
- 50mの練習中に「クリッカーの位置を数mm変えたんですけど、、」とNさんに言うと、「そのくらいなら殆ど影響なし」のご返事でした。確かにそうですね。
- しかし、10点を狙うのであれば、mmですから、これはクリッカが必須です。
この話は空気抵抗を無視しているのでかなり荒い近似です。空気抵抗を考えると滞空時間が延びますから、矢の降下距離も大きくなり、エイミング精度はもっと必要になると考えられます。
同じように、矢の初速の評価についても、弓の反動を考慮すれば、もっと遅くなりますから、これも精度を要求する方へ働きます。これについては、こことここ(アナログエンジニアさん)に、リカーブ弓の効率は60〜90%(競技用)という記述がありましたので無視してもそれほど悪い近似ではないと思います。
もちろん、実際の行射ではいい加減にやったのでは50mでは全くあたりません。これは的中精度に関して、エイミングではなく「リリースのやり方」が大きく作用している、という結論になると思います。多分。