slingの健康日記

体と心の健康、たまに海外出張

パケット通信、取れなかったIP

東北に引っ越したころ、平成になりたてのころの話、4階立てのアパートで一人暮らしで、給料も貰えるようになったので、長年の夢であったアマチュア無線局を開局することにした。ハンディの144/435トリオTH-77と、ミズホのピコ21を購入し、窓の手すりに無理やりλ/4GPを足場金具で取り付けた。3級の資格も取っていたので25Wのリニアアンプも購入し、休日の朝などには熱帯から南半球にかけてのオーバーシーをガンガン捉えて交信することができるようになった。
昼間から夜間には南からのDXは驚くほど全く入らなくなるので、144/435MHzのラグチューを何となく聴いていた。残念ながら地元の人たちの連絡用になっているようで、ブレークインできる雰囲気ではなかったような気がする。そんなとき、ときたま「ピーガー」と言う、faxのような通信音がずっと聞こえているチャネルがたまにあった。良く聞いていると、交互にやりとりしているのが分かる。これがパケット通信か、と早速、通勤途中にあった小さなハムショップ(開局手続きもここでして貰った)に立ち寄って、パケットアダプタ(TNC)を購入した。モデム経由だったか、PC直結だったかは覚えていない。ピーガー音のするチャンネルを探して、音がしなくなるのを待って、呼んで(PCでリターンを叩くだけ)見ると、応答がある。掲示板とフリーソフト類の置き場になっているらしかった。
しばらくの間はそれで楽しんでいたけれど、ちょうど、90年代前半で、仕事場でもインターネット接続が導入されつつあるところだった。シリアル回線経由でなくtpcipボードに一つ一つIPが割り振られ、trumpetと言うソフト(ドライバ)を導入すれば、Windows3.1でネットスケープと言うブラウザを使ってサイトアクセスが出来るようになると言う予定だった。それが、もう少し頑張れば一足先に、アマチュア無線で出来てしまうらしい。キーワードは「KA9Q、PRUG、yomi/kaki、寺子屋」であり、巷のBBSとはちょっと違うソフトウェアを使うと、IPが個人局に割り当てられるらしいことが分かった。当時は未だGoogleもない(インターネット自体無い)のであるから人の噂と本だけが頼りである。
そんな噂と言うか、書籍の知識を得て探し回ると、市内の某さんがIP局を開いていらっしゃることが分かった。BBS掲示板でお尋ねして、次の週の日曜日に伺うことにした。二千円の手土産を買い、背広を着こんで出かけたのであるが、、、、

玄関で旦那さんと一緒に内職をしていた奥方から、「何しに来た!」と怒鳴られ、あっけにとられていると、奥方は語りだした。ダンナさん当人はタクシーの運転手さんで、ハムにのめり込んで体を壊してしまったらしいのだ。それでハム仲間との関わり合いを禁止(?!)したのだそうだ。手土産を渡して、フロッピーディスク数枚(ゴミだった!)を受け取り、早々に退散した。
○○以外でこれほどいやな目にあったことはない。話のレベルからすると、ご自分でIPを取っていたレベルではなく、ローカルBBSを開局していただけらしい。それからほどなく、仕事場でIPが開通したため、パケットハム通信への興味は急速にしぼんでしまい、他にいろいろ楽しいことも出来たため、アマチュア無線の趣味自体がお蔵入りになってしまった。平成2〜3年頃であろうか。


※IPをハム局に正式に割り振るかどうかは未だに議論があるらしい。アマチュア無線は法令によって暗号の使用が禁止されているため、パスワードを傍受して解読しても罪にならないかも知れないのだ。逆に、パスワードを暗号化して送信した方が罪に問われるのかも知れない。誰でも聞かせられる通信を行うことで、通信技術の発展に貢献することが目的であるから。